働くことの楽しさ、お給料をもらうときの興奮や喜び。和気あいあいとした職場。
僕はこんな当たり前にあこがれている。
NBB Neoバンバンは、障がいを持っている人たちが、地域とつながり、企業と契約をして働く場をサポートし、提供している。
福祉用語を用いるならば、その形態を就労継続支援B型事業という。
ここに登録されている人は10名。平均年齢が、24歳ととても若い!
全員が障害を持っているが、継続して働くことができる人たちが毎日、自宅やグループホームから電車やバスを利用して通勤している。
JR草津線の甲西駅。電車に乗ってくる人、バスに乗ってくる人たちが降り立った。
バスの運転手も毎日の日課のように手を振り、いつもながらの挨拶を交わしている。朝のいい光景だ。
駅から歩いて10分。NBB Neoバンバンの事務所に着いた。
さらに、ひとり、ふたりとやってくる。
ホワイトボードに書かれた今日の仕事の内容を確認している。
現在契約している企業は9社。
主に、清掃作業が多いが、今日はレンタカーの清掃と、段ボールの組み立ての作業に同行させてもらった。
職員の山田辰治さんが、レンタカーの担当だ。
山田さんは何十年と福祉とはつながりのない仕事をしてきたが、引退後、送迎のドライバーを経て、現場に入るようになった。長い社会経験を若い彼らに伝えてほしいという願いから採用された。
「いや~みんなベテランですよ。ゴミ一つ見逃しません。
チェックの厳しい会社ですから、みんな緊張感と責任感を持ってやっています」
山田さんもみんなと一緒に、ぞうきんや掃除機を頻繁に持ち替え、車内に潜り込むようにして仕事を続けた。
福祉の仕事って幅が広く面白い職業だなって感じた。
山田さんのように、何かしらの資格を持っていたとしても、それは介助のような福祉的な仕事だけではなく、清掃や組み立てなど、みんなと同じ現場もこなす。
この仕事の幅の広さには、いろいろなところとつながる可能性もあるし、逆に福祉の仕事だけの世界から、多種多様な人たちとこれからを模索することもできる。
就労支援とは、障がい者のためだけのものでなく、職員の発想の豊かさも求められる魅力ある部署でもあろうと僕は考えている。
一息ついたところで、みんなに「疲れる?」と聞いたら、「そら疲れますよ!仕事ですから」って幸せそうな応えが返ってきた。
お年寄りや障がい者に寄り添う距離も大切だが、少し間(ま)を置くことも大切なのだと僕は思い始めた。
自身の力を尊重しながら、遠くで見守っていることだったり、うまく行っているように見える企業との関係性や段取りも、陰でこなしていたり。
そんな苦労を誰もほめてくれないのが、福祉の仕事なのだろうなって思った。
言葉にならない達成感が感動につながっているからこそ続けられるに違いない。
次にベアリングを梱包する段ボールの組み立て作業にお邪魔した。
ここの担当職員は、北川紘久さん。
大量に積み上げられた段ボールの山。
それぞれの担当を決め、猛烈なスピードで組み立てて行く。
山田さん同様、北川さんも段ボール組み立て作業員としては、大切な一人だ。
輪を組みながら、ときどきおしゃべりを交えながらする仕事は、疲れるが楽しい時間だ。 この会社にとっても、なくてはならない関係だろう。
就労支援という言葉の裏側には、任せたり、任されたり。企業との駆け引きが問われる現場だと思った。
ときどき突き放すことも優しさだったりするのだろう。社会に羽ばたくということは、そんなクールな一面を持ち合わせているのかもしれない。
社会を知るということは、多くの人と混ざり合い、出逢うことではないだろうか。
障害を持っている人が、一般社会に混ざり合っていくということは、一般社会も、障害という社会に混ざり合って行くことなのだろう。 無理に分かり合おうとすることほど時間のかかるものはないと思っている。
いつも横に居てくれることで、お互い様の社会が成立すると思う。さぞ暮らしやすい世の中になるだろうって、彼らの役目を見てそう思う。
職員は、その接着剤のような役目で陰の力持ちに見えた。
健常者も頑張るから、障がい者諸君だって頑張れ!