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<お知らせ>読売新聞に当法人職員の取材記事が掲載されました。【読売新聞2019.10.7】

更新日:2019年10月7日


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読売新聞 2019年10月7日掲載

企画事業部 横井悠さんへの取材記事が
     読売新聞「人あり」のコーナーに掲載されました。

芸術でボーダー超えたい

近江八幡市永原町上の重要伝統的建造物群保存地区にある昭和初期の町屋を改装した美術館
「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」。一歩入ると、青色のスーツ姿の女性を描いた絵が
何枚も飾られている。障害がある人もない人も分け隔てなく表現や作品を紹介する施設に、学芸員として
勤めて10年目になる。

 開催中の「ボーダレス・エリア近江八幡芸術祭」では、障害がある人など美術の専門教育を受けていない
人たちによる「アール・ブリュット(生の芸術)」作品と現代アートを展示。「ジャンルを超えて見る人にインパクト
(衝撃)を与えたい」と狙いを語る。

 幼い頃から美術に関心を持ち、大津市の成安造形大に進学。現代アートを専攻した。空間全体を<仕掛け>
のように表現するインスタレーションの制作などに励んだ。食費を削っては材料費を捻出する毎日。いつしか生活は
荒れ、下宿は足の踏み場もないほどだった。

「ここから逃げ出したい」。

そんな気持ちをぶつけたのもアートだった。創作に打ち込み、すでに開館していたNO-MAにも足を運んだ。
出展者に障害者もいることは知っていたが、そんなことは関係なかった。「新しくて面白い。作品そのものを楽しめた」。
現代アートの作品に感じたのと同じような衝撃を受けたといい、「面白い芸術作品は、誰が作っても面白いんだ」と魅力
を感じた。

 将来、創作の道に進むか、アートに携わる仕事をするか。卒業後も決めかねていたところに、指導教官から
「NO-MAに携わる仕事に就かないか」と誘われた。教官はNO-MAの設立準備に加わった人物。学芸員の資格はすでに持っていた。
「展覧会を企画したり、制作者としても関わったりできそうだ」。2010年9月、NO-MAを運営していた県社会福祉事業団に就職した。
「今思うと、縁があったのかも」と不思議な感覚になる。

 NO-MAでは美術だけでなく、福祉の知識も必要になる。発達障害の人たちがいるグループホームに泊まり込み、コミュニケーションの
取り方を学んだ。国内外の福祉施設で芸術活動に取組む人たちの調査にも取り組んだ。

 作品の出展は、本人に納得してもらって初めて実現できると考えるが、意思表示が難しい人も少なくない。家族や福祉施設の担当者と
話し合い、何とか本人の意思を確認しようと努力する。NO-MAの学芸員ならではの仕事だ。

 17年に企画した展覧会では、毎日1枚、コピー用紙にピンク色の階段を描き続ける吉田格也さんの作品「天国 階段」を展示した。吉田さんは、今から
7年ほど前、大好きだった祖母が亡くなった頃から毎日書き続けているといい、ロール巻きにできるほどの枚数になっていた。

 事前の交渉で出展の承諾は得ていたものの、作品を借り受けに行くと、吉田さんがなかなか手を離さない。何度か繰り返した後、吉田さんが深呼吸と同時に
作品を渡してくれた。作品への思いを垣間見た気がした。「吉田さんがアートとして制作しているのかどうかはわからない。でも自分のエネルギーを
表現しているんだからアートと呼べる」。後日、会場を訪れた吉田さんから、その場で描いた絵をもらった。「やってよかった」と改めて、学芸員のやりがいを感じた。

 「障害の有無、プロか、アマチュアか、芸術か福祉か・・・。そうしたボーダー(境界)を超え、面白くて、驚いてもらえる作品をもっと世に出したい」と力を
込める。そして、ひそかに抱く夢がある。「いつかは制作者としても関わりたい」。目標に向かって、日々研さんに励んでいる。

(中村総一郎)【読売新聞 2019.10.7】

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