トピックス

日本脳外傷友の会全国大会
理事長講演レポート

更新日:2016年10月21日


 平成28年10月8日(土)高知県高知市のかるぽーとにて、<日本脳外傷友の会 第16回全国大会2016in高知「見えない障害?」「見てない障害?」~もっかい考え直さんかえ~>が開催されました。日本脳外傷友の会の全国大会は、毎年1回行われ日本全国から脳外傷友の会の会員団体やその他の当事者、家族、支援者が参加しています。

 大会では、障害者支援に関する全国的な状況から高知での支援状況まで当事者、家族、行政、医療、支援者など様々な視点で語られました。

 今回、この大会に北岡賢剛理事長が招かれ「滋賀県における高次脳機能障害支援の現状から、今後の支援を考える」をテーマに講演させていただきました。

 冒頭で北岡理事長が今までに行ってきた新しい障害福祉サービスの創出と行政への働きかけを振り返りながら、滋賀県高次脳機能障害支援センターの相談事例を通して知った支援の行き届きにくい現状について考えること、高次脳機能障害支援の法制化の必要性や、その為の働きかけの方法等について話しをしました。



 
―私と私たちの法人のことについて―

 知的障害者の入所施設の勤務時代に「あると思うな非番・公休・夏休み」をモットーに、当時の職員たちと勤務外で「24時間対応型の在宅サービスをやろう」と取り組み、それが滋賀県の事業、全国の事業として繋がっていったことや、全国に先立って「障害者サービス調整会議」(後に、地域自立支援協議会となる)を始めたこと、このような実践をしてきたことにより、社会保障審議会障害者部会の委員を受任することに繋がったこと等、今までの経緯と法人の紹介をしました。



 
―高次脳機能障害との出会い―

 高次脳機能障害支援センターを運営する中で、センターの相談員から「支援が行き届き社会復帰している方も増えてきているが、一方で社会的行動障害が表に強く出ているために家族や支援者が受け止めにくくなっている方もおられ、こういった方への対応が遅れている」という話を聞き「深刻なケースであればあるほど福祉サービスの利用が出来ない現状があり、高次脳機能障害の支援について本格的に取り組んでいく必要がある」と課題意識を持ったことを話しました。



 
―事例から思う事―

 センターが支援をしている2つの事例を紹介し、そこから感じたいくつかの課題について述べました。小児期に受傷し、成人期になるまで福祉サービスを受けずひきこもり状態であった事例から「早期の発見や、適切な対応により自己認識や人間関係を豊かに育む力などを習得できたのではないか」ということや「受傷後の診断から復学、生活、就労までの一連の支援体制が必要になる」と感じたこと。また、触法行為を繰り返し、家族が疲弊している事例では、重たい障害を持つ人ほどかえって福祉サービスを受けられていない現状があることに触れ「障害者総合支援法などで隙間は埋まってきていると思われているが、そうではない人たちがいたという事を知り、今後この国の中でどのように支援体制を位置づけるのかが大きな課題だ」と感じたことが次に話す社会保障審議会等での発言に繋がりました。



 
―私なりのアクション~社会保障審議会障害部会での議論と厚生労働科研―

 平成27年度の社会保障審議会障害者部会で「認知障害が重度の方や社会的行動障害により周囲の対応が難しい方への支援体制がまだ整っておらず、各支援拠点機関の実態調査をすること」や「当事者や家族のニーズを把握し、現在の支援体制が適切かについて検討すること」「実際の受止め先である障害福祉サービス事業所での具体的な支援方法にも力点が置かれた研究を進めてほしいこと」等を発言したこと、この発言も後押しになったのか、平成28年から平成30年までの3年間の厚生労働科学研究費補助金事業「高次脳機能障害者の社会的行動障害による社会参加困難への対応に関する研究」が始まったことを紹介しました。



 
―私の法人としてのアクション~中期経営計画と今後の取り組み―

 滋賀の脳外傷友の会では今年10月にB型事業所を立ち上げるなど、支援に意欲的に取り組んでおられることに触れつつ、法人としても出来ることはないかと検討を進めており、「行動障害が強く表れている方を施設として受け入れていくことや、訪問による自立訓練のサービスが提供できないか等、今後検討を深めていく」という方向性を伝えられていました。



 
―高次脳機能障害をもっと知ってもらうために―

 「発達障害者支援法が平成17年4月に施行され、約10年後の平成28年5月に発達障害者支援法の改正法が成立したことで、発達障害者に対するこの国の理解が格段に広まったが、この間に高次脳機能障害に特化した法律は1つも出来ていない」という事実を挙げ、現在の高次脳機能障害の支援は「発達障害と比較して2周遅れているのではないか」という危機感を共有しました。ここから支援を進めていくための方策として、当事者運動の方法論について述べ「家族だけ、医療だけではなく、支援者だけでもなく、この3者だけでもなく、もっと高次脳機能障害の方を知ってもらう広がりを持たせるためには運動が“楽しい”と思えなくてはいけない」と訴えかけました。

 また、運動の方向性を広げ多くの共感者や協力者を得るためには「現状を批判するだけでなく、偏りのない多角的な情報を得ることが重要であり、障害者運動において団体によって法律や物事の解釈が大きく異なることがあるが、その時に片方の情報だけで評価するのではなく、様々な情報を集めることが必要だ」ということ。そして、繋がり合うためには言葉という1つの共通のツールを持つべきであることについても述べられ「脳外傷友の会には、脳外傷だけでなく脳損傷の人たちも入っておられるが、そういう人たちがこの会に参加されていて『うちは脳外傷じゃないんだけど…』と思いながら参加していることもあるのではないか」と、団体が一体感を持ちにくい状況になっているかもしれない可能性も示唆しました。

 毎年滋賀で行っているアメニティーフォーラムでは、少しずつ参加者が増え、現在約1500人の福祉関係者や、多種多様な業界の研究者、それぞれの見解をもつ政治家も集まっている例を挙げ「法律制定に向けて私たちの思いを託すことも必要になる。幅広く誰も拒まず、しかし、言葉として皆が集える言葉を選ぶ。こういうことが運動の広がりになっていく」と述べました。

 今回の全国大会、そして今回の実行委員長の片岡氏との交流をきっかけに「当事者団体からの情報ももらいながら、引き続き今後の社会保障審議会などでの問題意識につなげていきたい」と締めくくりました。

 最後に、来賓の山本博司参議院議員を壇上にお招きし、今後の高次脳機能障害支援の発展に向けてご挨拶をいただき、講演を終了しました。


 その後に続く講演会やシンポジウムの中でも、行政への訴えかけや、法的根拠を明確にすることについてなど、幾度となく北岡理事長の発言が取り上げられ、その注目の高さが伺えました。

 今大会の実行委員長の片岡保憲氏(NPO法人脳外傷友の会 高知 青い空 理事長)は、大会最後の挨拶で「それぞれに意見があり、言いたい事は沢山あるかもしれない。しかし、いろんな人や各専門分野がタッグを組んでやっていくためには、相手の立場に立って言葉を選んでいくことが重要だと感じた」と話され、本講演が今後の高次脳機能障害の支援および体制整備に向けて団結していくための大きな一石になったのではないかと感じました。


(滋賀県高次脳機能障害支援センター 三田村 麻奈)

このトピックスの関連施設

TOPへ戻る